SR (Substitutional Reality)
SR (Substitutional Reality)
現実世界の映像や環境を仮想的に「置き換え」、ユーザーに別の現実体験を提供する技術。
ユーザーは、自身が今いる現実空間の映像をもとに、異なる人物や過去の出来事などを現実のように体験できる没入型体験を得られる。近年は、心理学実験や教育、観光、エンターテインメント分野で活用され、特に「記憶の再現」や「他者視点の体験」に注目が集まっている。
●SRの変遷
SRの概念は2010年代初頭、東京大学の研究グループにより提唱された。従来のVRやARと異なり、「実際の現実映像」を加工・編集して提示する点が特徴で、当初は認知科学・行動心理学の研究用途で利用された。近年では、映像技術やHMD(ヘッドマウントディスプレイ)の進化とともに、教育現場や観光体験、企業研修などでの実用化が進んでいる。
●SRとVR・AR・MRの違い
・SRとVRの違い
VRは仮想空間をゼロから構築するが、SRは現実の映像をもとに仮想体験を作る。
・SRとARの違い
ARは現実世界に情報を「付加」するが、SRは現実そのものを「置き換え」る。
・SRとMRの違い
MRは現実と仮想が相互に作用するが、SRは「現実に見えるが、実は過去や別の現実」であるという体験を作り出す。
●SRの仕組み
SRは、以下の技術要素を組み合わせて実現されている。
・現実世界の高精細映像撮影
ユーザーがいる現実空間と同じ環境の映像を事前に撮影し、それを仮想的に提示。
・リアルタイム映像切替システム
ユーザーの動きに応じて、あたかも「今その場で起きている」かのように映像を同期させる。
・視点追跡・動作反映技術
ユーザーの視点や動きに合わせて、映像内の視点をリアルタイムで変更し、没入感を高める。
・音声・環境音再現技術
現実空間の環境音を仮想空間に同期させ、違和感のない体験を提供。
●活用例
SRは「過去の出来事を体験する」「他者の視点で現実を疑似体験する」など、現実と記憶・認知の接点が求められる分野で活用が進んでいる。
・心理学実験での記憶
・行動の検証
・教育分野での歴史的出来事の再現体験
・観光地での「過去の風景」体験
・企業研修における他者視点体験(例:顧客の立場での体験)
・医療分野での認知症予防やリハビリ支援
例えば、観光施設では、来場者が昔の町並みや戦前の景色を、今その場にいるかのように体験できるプログラムが実施されている。また、企業のダイバーシティ研修では、SRを用いて「障がい者の視点」や「顧客から見た店舗体験」を疑似的に体験する取り組みが行われている。
このようにSRは、「別の現実」を疑似体験させることで、人の認知・感情・学習に働きかける新しい技術だといえる。